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記事一覧

上海レクイエム・30

 十章 皇帝のボレロ・2「たぶん、エレベーターホールも押さえられてると思う」 と、シンがつぶやくが、あいにく私たちのいる場所からエレベーターの姿は見えない。「何でわかる?」 不思議に思ってそうきくと、シンは小さく肩をすくめ、「エスカレーターとエレベーターを押さえれば、先生があいつらの目をすり抜けて下に降りることができない」「……非常階段は?」 私はちょっと考えてからそんな案を出してみた。が、……我なが...

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上海レクイエム・31

 十章 皇帝のボレロ・3「ハオランのところまで案内してもらおうか」「承知しました。ハオラン様は、三十階でお待ちです。どうぞこちらへ……」 先に立って歩き始めるヨコザワ嬢の後ろをついて歩きながら、ユンは、(こいつはハオラン好みの社員だな)と胸中でつぶやいた。余計な口を利かず、また、好奇心も持たない。言われたことだけを盲目的な従順さでこなすタイプの人間。それがハオランの好みだ。一見おとなしそうな様子で万...

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上海レクイエム・32

 十一章 水のPUZZLE・1  上海は、雨だった。私とジューダス、及びサイレンスは空港からタクシーに乗り、一路、『例の老人』がいるというマンションを目指した。時刻は深夜を回っており、昼間は賑やかなプートン地区もひっそりとしていた。もっとも、ジューダスが言うには「台風が近づいているせいもある」ということだけれど。 私は運転手の真後ろという席に座っており、隣にはサイレンスがいる。ジューダスは助手席。サイレ...

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上海レクイエム・33

 十一章 水のPUZZLE・2 もっとも老人は、特に気を悪くもしなかったようで、「……お前さんはそう言うがな。お前さんみたいなのがハングオシャンニェンみたいな男と一緒にいるのが、どうもふしぎでな。まあ、そうなると色んな想像をたくましゅう……」「……ジジイ、てめぇ、見た目よりだいぶん元気だな」 私は心の中に暴発した様々な言葉の中から最も穏当なものを選んで口にした。相手が寝たきりの老人でなければ、ひと蹴りお見舞い...

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上海レクイエム・34

 十一章 水のPUZZLE・3「凪のおかげで、ハオラン先生もこれまでよりは仲良くしてくれそうだ」  と言った後、ちょっとふしぎそうに首をかしげる。「……正直、昨夜、あそこまで話してもらえるとは思っていなかった。凪、どんな手品を使ったんだ?」 そう問われ、私はまず(そもそもの前提として、どれだけこの人ハオラン氏に嫌われていたのだろう?)という懸念を感じ、次いで、でも要するに、昨夜ユンはハオラン氏とかなり深い...

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上海レクイエム・35

 十二章 絶対、絶命・1 上海の根城(シンはこの呼び方を好んだ)には、ミアの姿もソウタの姿もなく、サイレンスが一人で本を読んでいた。 ミアもソウタもそこにはいないだろう、ということは、わかっていたが、サイレンスがいたことは意外だったので、シンはつい、「お前、いたのか」 と声をかけたが、すぐにあることに思い当たり、一人で苦笑した。シンとミアが上海での活動拠点としていたこの部屋は、ジューダスの好意で貸...

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上海レクイエム・36

 十二章 絶対、絶命・2 気のない声だったが、ちらりとユウゴを横目に流し見、「……まあ、でも、あれちゃうか。いったん戦場に放りこみゃ、どいつも死に物狂いになるしかない。それにいまなら、まだシンにはツァンインの後光が差しとる。そのどさくさに、旧ツァンイン軍をいっきに新二竜会にすり替えたろ、思うてんのちゃうか?……大そうなこと考えるガキやな、リュウジの弟は……」 と、褒めるともあきれるともつかない口調で、独...

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上海レクイエム・37

 十二章 絶対、絶命・3「うまくいったな」 仮設もいいところの『本部』であるバン型の車の中、ほくほく顔のホアンに形ばかりうなずいてみせたものの、シンは内心のいら立ちを押し殺すのに苦労した。シンから見ると期待外れの小さな戦果に喜ぶホアンもウザかったが、やはり千載一遇ともいうべきであったこのときに、ソウタを引き連れて邪魔をしに来たミアのことが憎かった。 ちなみに、肝心のワンロンには逃げられたようである...

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上海レクイエム・38

 十三章 CRAZY GAME WE ARE PLAY・1「姐さん、シオウさん、入ってよろしいですか?」 と言いながら入ってきた人物は、なんとショージであった。彼がマオジンシーとともに行動していると思い込んでいた私は、「ショージじゃないか。来てくれたんだ。……でも、ワンロンの方は大丈夫なのか?」 と気遣ってみせると、ショージはフンと鼻を鳴らし、「あいつと長時間一緒におったら、身内同士で殺し合いになりますさかいな」「……物騒...

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上海レクイエム・39

 十三章 CRAZY GAME WE ARE PLAY・2 それじゃあ行動に移ってくれ、と言いおいて無線を切ると、ホアンが口を開いた。「で、あんたは、どうするんだ?」「……僕?」 シンは考える風を装って時間を稼ごうとしたが、ホアンは既に何事か感づいているらしい。一歩も引かぬ目つきでシンをにらんでいる。「僕は、少し用があるんだ」 大してうまい嘘も思いつけず、シンはイラ立ちを押し殺してそうつぶやいた。早く行かなければ、という...

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プロフィール

ふじきよ なお

Author:ふじきよ なお
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オリジナル長編小説中心の小説ブログ。長編小説『リオデジャネイロ・ライジング』完結。長編小説は『上海レクイエム』以降同シリーズの続編となっております。『ダチョウが空を飛んでいる』ぬるりと連載再開。どうぞごゆるり……。

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