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記事一覧

バルセロナ・テンペスト・33

 十一章 バルセロナ心中・2(ともかく、ここで突っ立っていても仕方がない) とセルヒオとフェデリコは、同時に考えた。考えた結果、「よし、いったんデサストレ地区に帰ろう!」 とセルヒオはパブロの腕をつかんだまま、右の方へ歩き出し、「探偵さんを探しに行こう!」 とフェデリコもまたパブロの腕をつかんだまま、左の方へ向かって歩き出そうとしたので、両者の真ん中にいるパブロが一瞬、真っ二つに引き裂かれそうにな...

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バルセロナ・テンペスト・34

 十一章 バルセロナ心中・3 サイレンスは、私たちの話が決まったとみるや、おもむろに立ち上がると、どういうわけか突然ジャケットの前をはだけてみせた。「……?」 と私は突然の行動にびっくりして息を呑みつつ、つい、彼がジャケットの下に着ているティーシャツの文言を読んだ。いわく、『関係性レボリューション!』 ……相変わらず文字入りのティーシャツが好きらしい、とあきれて見ていると、今度はくるりと回転して背中を...

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バルセロナ・テンペスト・35

 十二章 The Bringer Of Fire・1 知らないうちにいなくなっていたガルシアが、また知らないうちに戻ってきていたのに気づいたとき、『ニエベ・ロホ』のメンバーは異様な思いに打たれたが、誰もそのことについて自分たちのリーダーに問いただす者はいなかった。彼がこっそり何をしていたのかについて、だいたいの察しはついたからである。 だから、小一時間後、バイクに乗った誰かが通りすがりにガルシア宅に向かって二~三発...

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バルセロナ・テンペスト・36

 十二章 The Bringer Of Fire・2 どこをどう歩いているのかはわからないが、でも、デサストレ地区に近づいていることは私にもわかる。徐々に強くなっていく油を含んだ煙の臭い。「ガソリンみたいなにおいがします。……こらぁ、放火かもしれませんな」 と鼻を動かしながらショージがつぶやく。 デサストレ地区に近づくにつれて、すれ違う人の数が増えてきた。言うまでもなく、そこから逃げ出してきたらしき人々である。家財ら...

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バルセロナ・テンペスト・37

 十二章 The Bringer Of Fire・3「さあ、僕たちは、カルメンのじいさんを探しながら、逃げ遅れている人たちを助けてこいって言われただけだから……」 とエンリケが困り顔をするのに、「ユンは、アレハンドロと一緒に行動してるんじゃないか? だったら、……どこか、アレハンドロの行きそうな場所の見当はつかないか?」 と粘り強くシオウが質問を重ねる。エンリケは「ちょっと待って」と断ると、いったんセルヒオとフェデリコ...

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バルセロナ・テンペスト・38

 最終章 To The New World・1 モレノじいさんの空き家こと指令本部で、ホセは何度か電話をかけた。 相手は、グアダルペである。 彼女の勝手気ままな単独行動は、いまに始まったことではないが、しかし連絡もせずに作戦から離脱することは、どう考えてもありそうにないことだった。 グアダルペの携帯電話は、電源を切られた状態で、そのままになっているらしい。 何度目かの、それを告げる電話会社のアナウンスを耳にしたホ...

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バルセロナ・テンペスト・39

 最終章 To The New World・2 そろそろ、パトカーや消防車のサイレンが、地区のあちこちからし始めている。(……そういえば、花の礼を言い忘れていたな) 空き家から離れるように歩きながら、ホセはふとそのことを思い出したが、足を止めることはしなかった。花というのは、イサベルの死体が発見された場所に供えられていた花のことで、たぶん、ユンがつれてきた探偵と紹介された女が供えたものであろう。彼女が、アレハンドロ...

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バルセロナ・テンペスト・40

 最終章 To The New World・3 シンは、そんなエンリケの複雑な顔色をまじまじと見つめ、「……いや、でも、アレハンドロはスペインから離れないと思うよ。うまく言えないけど、それが役割だから」「え、そうなの?」 とシンの予想通り、そこのところを誤解していたエンリケは、一瞬顔を輝かせかけたが、しかしすぐに顔つきを暗くし、「でも、『バルカス』は解散だって……」「……ああ」 シンには、すぐさま、アレハンドロの気持ち...

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