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バルセロナ・テンペスト・3

 一章 Puzzle Of Water・2 とたんに、兄の顔が歪んだ。「いい加減にしてくれ!」 悲鳴のような声。「イサベルが、あんなことになって、私だってまだ混乱してるんだ。妻も、あの日以来、部屋から出てこない。……頼むから、これ以上騒ぎを起こさないでくれ」「…………」 ホセは、わかった騒ぎなど起こさない、とは言わなかった。 何故なら、既に騒ぎは起こっているのだ。ホルヘの知らないところで。そして、ホセには、その騒ぎを...

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バルセロナ・テンペスト・4

 一章 Puzzle Of Water・3「そんな女が、ロペスなんかに引っかかるかねぇ?」 セルヒオは死体の方を見なくて済むようにドアにおでこを引っつけたまま、うめくように言った。無論、ユンとて言ってみただけのことで、本当にそんなことが起こったなどと考えているわけではない。「……それにしても、お前たち、妙に落ち着いてるな?」 ロペスに向かって遅まきながら手で拝むポーズをした後、ユンはアレハンドロに向かってそう言っ...

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バルセロナ・テンペスト・5

 二章 バルセロナ・クエスト・1 バルセロナにあるプラッド国際空港に着いたのは、夜の七時頃のことである。「寒い。……スペインは、太陽の沈まぬ国じゃなかったのか」 空港を出るなり、私はひとつくしゃみをしてから、そんな文句をたれた。辺りは既に夜闇に沈み、太陽の姿など影も形も見当たらない。今夜は曇りらしく、月も出ていないし。「夜だもの。それに、スペインだって十一月ともなれば、もう冬だよ」 とシンは首をすく...

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バルセロナ・テンペスト・6

 二章 バルセロナ・クエスト・2「ちょちょちょ、ちょっと待って。ユンが言ってるのは、架空の物語のことで、現実的には私立探偵が殺人事件の捜査をするなんて、ありえない話で……」 あわててそう訴えたが、『待たない』 とユンは、ばっさり私の訴えを退け、『明日、午後に合流しよう。その時に詳しいことを依頼人から聞くといい』「い、依頼人?」『そうだ。無実の罪で裁かれそうになっている、気の毒な依頼人だ。……なんでも一...

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バルセロナ・テンペスト・7

 二章 バルセロナ・クエスト・3「シン!」 私はシンのケンカ魂を鎮めるべく、𠮟りつけるような声を出した。シンは不満げに唇をとがらせただけであったが、ここでようやくネイサンがシンに興味を示し、「君か、シンというのは。上海で、だいぶ暴れたらしいな。話には聞いてるよ」 と、初めてシンの方に顔を向けて話しかける。シンは特に嬉しげにもせず、肩をすくめて、「へぇ、僕のこと、知ってるんだ。それは光栄……」 と生意...

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バルセロナ・テンペスト・8

 三章 ALEJANDRO・1 ジューダスが、凪とシンが『コロンブスの塔』で撮った写真をメールで受け取ったのは、バルセロナ行きの飛行機が飛ぶのを待つ空港にいるときのことである。 無論、彼はバルセロナに行く気満々であった。せっかく起こるであろう騒ぎを見逃す手はないし、『ちょっとした微調整』を行うには、現地にいた方が何かと都合がいい。 ジューダスは、いったん彼の携帯電話に送られてきた画像を、彼が世話する老人の...

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バルセロナ・テンペスト・9

 三章 ALEJANDRO・2 スモは、思い出そうとするように首をひねりつつ、「……それこそ、ゴマンといるんじゃないか。ここに住んでいる連中だって、ここに住みたくて住んでいるやつらばっかりじゃない」「そんなことはない」 アレハンドロは、頑として首を横に振った。「ここに住んでいる連中は、ここにしか住めないから、ここにいるんだ。よしんば小金を貯めてもっとマシな場所に引っ越す連中がいたとして、でもそういう連中は理...

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バルセロナ・テンペスト・10

 三章 ALEJANDRO・3 アレハンドロとエンリケが、どことなく居心地の悪そうな顔をしているのに気づき、そう問うと、アレハンドロは小さく首をすくめて、「まあ……俺たちには、あんまりお呼びじゃないかもね」 エシャンプラ地区は、モデル二スモ建築と呼ばれる歴史的な価値のある建物や高級ブティックの立ち並ぶエリアである。「俺たちだって別に呼ばれてないけどなぁ」 とシオウが首をすくめてみせる横で、「でも、この牛、な...

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バルセロナ・テンペスト・11

 四章 SHERLOCK GAME・1 デサストレ地区において『トルエノ・ネグロ』と双璧をなすチーム『ニエベ・ロホ』のボスのガルシアは、怒りも悲しみも通り越して、ぼう然と、変わり果てた姿で横たわる弟のフアンを見つめた。 変わり果てた。 否。 とガルシアは自分の思い浮かべた表現を自分で打ち消し、改めて弟の遺体を、努力して、できる限り冷静な目をもって見なおした。 服装も髪型も、今朝と何一つ変わっていない。(だが、...

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バルセロナ・テンペスト・12

 四章 SHERLOCK GAME・2「……つまり、どういうこと?」「俺たちはお前たちの手伝いをするが、お前たちにも俺たちの役に立ってもらう、ということだ。俺たちは俺たちで、スペインに友達ができるのは、ありがたいんだよ」 シオウが苦笑いしつつ、答えを引き継いだ。 日本を拠点とした彼らのアジア市場は、彼らの商売からすれば決して巨大な市場ではない。どころか、正直なところ、上司から正式に指定された拠点である日本は、市...

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プロフィール

ふじきよ なお

Author:ふじきよ なお
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オリジナル長編小説中心の小説ブログ。長編小説『リオデジャネイロ・ライジング』完結。長編小説は『上海レクイエム』以降同シリーズの続編となっております。『ダチョウが空を飛んでいる』ぬるりと連載再開。どうぞごゆるり……。

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